“仮面の女神”の謎

田村 岳峰


 さて、何の土器を作ろうかな!あと三日で北海道への車旅。当分帰ってこないし、時間もないから簡単な土器にしようと資料を見ていると,何故か山形県西ノ前遺跡の「縄文の女神(ヴィーナス)」と、長野県中ツ原遺跡の「仮面の女神(ヴィーナス)が眼に留まった。

 縄文のヴィーナスは八頭身美人で、長い脚にパンタロンルックであり、顔には細工がしていないが、何か微笑んでいる様で優美である。一方、仮面のヴィーナスは球体に近い太い二本の脚、腹は膨らみ、顔は鉄板を逆三角形に付けた様な、まさに謎の仮面の女神である。

 当然、優美な縄文のヴィーナスを作ろうと思い再度ネンドを練り、いざ作り始めようとした時、ふと部屋の端に置いた資料の仮面のヴィーナスが両手を広げて、“見て・見て!“と私を招いているように思えた。

 私は一瞬躊躇したが、“あの仮面は何だろう”と考え、縄文のヴィーナスには悪いが、その仮面に惹かれて、いつの間にか太い球体に近い脚を作り始めていたのである。

 この太く重い二本の脚をどの様に付けるか迷った。中は空洞だが、土器作り未だ一年の私の筒型や深鉢の手法が通じない。厚めの帯を作り、腰をくびれる様にしながら、腹部を少し出す様にして積み重ねた。勿論、脚と腰部の内側は少しネンドを足し、重さで落ちない様にしっかり付けた。

 背面の背筋は真直ぐだし、腹部は妊婦で丸く出さなくてはいけないので、少し苦労したが、何とかクリアーして水平の両腕をつける。両腕が垂れてしまうので、篠竹で乾燥するまで支えた。

 女らしくない太い首まで作り終え、逆三角形の仮面を付け頭部を作ったが、なかなか上手く形が出来ない。


 勿論,頭部も空洞のため、頭部の前半分、うしろ半分にして何とか作り終えた。更に頭部に十文字に細い帯をかけ、くびれの部分に水平に帯を付けたところ、丸く優美な縄文のヴィーナスの髪型と違い何か兜を被った様であり、女性らしい髪型には程遠い頭部である。背面全体を見てバランスを考えてみた時、私はハット思った。なぜ今まで気付かなかったんだろうか!ウソだろう。丸い首、丸みを帯びた頭部はまさに男性のシンボルそのものではないか??・・・。
 

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